課題に夢中で取り組む素地は、読書がつくる
「うちの子は文章力がなくて……」という話をよく聞きます。それは多くの場合、本をたくさん読んでいないことが原因だと思いますね。
文章を書くのが苦手な子どもを見ると、「何も書くことがない」「何も思いつかない」と滞っている。… 中略…たとえば「環境問題について書いてください」という課題があるとします。その場合、環境問題について知識がある、環境問題について考えたことがあるなど、ある程度スキルがないとだめですね。だから、読書は大事なんです。
マルコム・グラッドウェルという人が「1万時間の法則」ということを言っていて、どんな分野でも1万時間練習するとプロになれるそうです。読書でいうと、一日3時間読んで10年かかる。かなり大変ですが、1万時間を目安に本を読んでいただきたい。古典からからエンターテインメントまで、マンガから活字まで、ありとあらゆる本を読むのがよいと思います。それが結局、知性の幅、スペクトラム(連続体)になっていくのです。
好きな分野の本を読書のきっかけに
読書嫌いの子どもに読書の喜びに目覚めてもらうには、読書が楽しいことだとわからせないといけません。
それには、子どもが何かに興味を持ったときがチャンス。恐竜が好きになったら恐竜の本、ロボットが好きになったらロボットの本というように、そのとき興味のあるジャンルの本を与えてあげてください。文字の少ない図鑑でもいいんです。最初は視覚から入るほうが、子どもの脳にとってはわかりやすいので。そのうちに文章のほうが面白いことに気付いて、そこで楽しさを味わって火がつけば、あとは勝手に燃えてくれます(笑)。
小学生向けにおすすめの本を3冊選ぶとすれば、『だれも知らない小さな国』『大きい1年生と小さな2年生』『赤毛のアン』がいいですね。きっと読書の楽しさを味わえると思いますよ。
それから、見落としがちなんですが、保護者が本を読まないとだめです。自分が読んでいないのに子どもに読めと言っても無理ですよね。保護者がふだんから読んでいる姿を見せる、あるいは家に保護者の本棚があることが大事。
僕も小学校高学年くらいのときに、父親の本棚から選んで経済書などを読んでいました。家の本棚に本が少ししかなかったら、豊かな読書体験のきっかけがそれだけ減ってしまいます。
また、幼少期に読み聞かせするときも大事で、登場人物の気持ちに寄り添って保護者のかたが語りかけをするといいと言われています。たとえば桃太郎の話でも、「このとき桃太郎ってどういう気持ちだと思う?」などと問いかけてみてください。子どもの中で、他人の気持ちを推測する回路の働きが強くなるので、おすすめですよ。